しかし、次のステージはそんな甘ったるいものではない。
交際が発覚した瞬間から、きっと幸せな日常は奪われてしまう。
連日マスコミに追われたり。
記事にはあること無いこと書かれてしまったり。
ファンに嫉まれて嫌がらせをされたり。
街を歩くだけで人差し指を向けられたり。
時には、病院を営む両親に迷惑をかけてしまうかもしれない。
考えるだけでゾッとする。
セイくんは事務所のスタッフが守ってくれるかもしれないけど、一般人の私は自分でどうにかしなければならない。
それに、一般人は反論する機会がないから、情報だけが横行してしまう可能性がある。
こんな世間の厳しい壁に立ち向かえる勇気があるのだろうか。
紗南はセイとの未来を思い描いたら、少し弱気になった。
「でも、もしそれでもお前が俺の傍に居てくれるというのなら。…………俺達、一緒に暮らそうか」
我が耳を疑った紗南は、一瞬聞き間違いだと思いセイの方へと見上げた。
「えっ………」
「毎日一緒に居よう。一番近くでお前を守ってあげるから」
セイの目は本気だ。
同棲なんてアイドルにとっては死活問題だが、いっときの目線も離さない様子からして冗談で言ってる訳じゃないとわかる。