「えへへっ……。実はセイくんに会えない間、再会したらどうやって告白しようかなって、ずっと考えていたんだ」

「へぇ…、どんな?」


「お互いの目をしっかり見て、お互いの体温を感じながら想いを込めて告白したら、言葉以上の気持ちが届くんじゃないかって。その答えに辿り着いた時、2年前のセイくんの考え方に届くようになった」

「俺の考え方って…?」



セイは首を傾げ、優しく紗南に問う。



「留学日程が前倒しになった件を私に伝える前に報道が出た時、セイくんは遅くなっても電話やスマホのメッセージに頼らず自分の口から伝えてくれた。あの時の私は理解がなかったから、『どうしてこんなに大事な話を早く教えてくれなかったんだろう』って思っていたけど、後になって直接伝える大事さに気付いたの」

「うん……」


「お互いちゃんと顔を合わせて話さなきゃ、相手の想いまで行き届かないよね。以前は、私がセイくんとしっかり向き合って話をしなかったから、事が拗れてしまったんだよね。別れ話をした時の事をすごく後悔してる」



紗南が悲しげに表情を落とすと、セイは穏やかに微笑み首を軽く横に振った。



「その課題はもうクリア出来たよ。これからは、小さな事でも2人で話し合っていこう」

「うん…。それともう1つ。気持ちを伝えるのに2年もかかってごめんね。それと、傷付ける嘘をついてごめんね」



言えた。
セイくんに会ったら伝えたかった言葉が。
ずっとずっと、排出される事なく胸の中に止まっていた想い。



『好き』
『傷付けてごめん』



このふた言だけは、絶対に伝えなきゃって思っていた。
だから、伝える事が出来て本当に良かった。






紗南は安堵すると、瞳からポロっと二粒の涙が零れた。

すると、瞳を潤ませていたセイの左目からも、ツーっと1本のスジを描くように涙が流れていく。