「本当はね、言いたい事は100個以上あるんだ。…でも、大事な事を伝えられなかった昔のようにすれ違いたくないから、今は最も重要な事だけを伝えたい」

「うん、聞かせて……」



紗南は膝に置いているセイの両手を取ると、セイは大きく瞬きをして紗南を見上げる。

それから紗南はゴクリと息を飲み、想いを伝える準備が整うと、セイと目線を合わせた。



「人が何と言おうとも、仲を引き裂こうとして恋路を邪魔されたとしても、2人の恋が誰にも認めてもらえなくても。………私は、セイくんの事が好き」



セイは口を結んだまま軽く瞼を落とし、頭を2回頷かせる。



「セイくんという一等星は、夜空に浮かぶ無数の星屑に埋もれないくらい、大きくて、明るくて、眩しくて………。空に手を精一杯伸ばしてみても、点のように小さな私には全然届かなかった


でも、セイくんは歌が上手く歌えなかった幼い私に、『これは歌が上手になる飴だよ』と言って星型の飴をくれたり、留学を機に別れを告げた私に別れたくないからと普通科の校舎に侵入したり、2年経っても私の事を忘れる事なくエスマークのメッセージを送ってくれたり。人気があって何万人ものファンがいるくせに、何の取り柄もない一般人の私に『好きだ』って気持ちを伝えてくれたりした


付き合い始めてから、ずっと険しい恋路を辿っていたから、なかなか思うような恋愛が出来なくて、セイくんが近くて遠い存在だなって思ったりもしたけど、実際はいいところもダメなところも沢山あって、普通の男の子で、とても人間味が溢れていた。だから私は、ずっと一等星を見つめ続けてきた」


「セイくんは昔から負けず嫌いだから、きっとアメリカでも人一倍努力をしてきたんだと思う。完璧な人間なんてこの世に存在しないけど、完璧に近付くよう努力する人もいる」


「……それが、セイくん。私の好きなセイくんなんだ」

「紗南……」



紗南の視界は涙で歪んでいる。

そして、黙って聞いているセイの瞳も、次第に涙が潤み始めた。