「そ、大事なものを日本に置いて2年間アメリカで頑張ったご褒美だって」
「うそ……」
紗南は思わず口に手を当てる。
「昼前に冴木さんが空港まで迎えに来てくれて車に乗り込んだんだけど、最後まで行き先を教えてくれなくて。だから、てっきり新居か仕事先に連れて行くと思ってたんだ。……でも、到着した先は母校だった
到着後に『どうしてここへ?』と問い尋ねてみたら、『もし、私が福嶋紗南さんだったら、今日はここに来るはずよ』って、変な自信を覗かせていたよ
きっと、お前がここに来る事を予測していたんだろうな。そこで、俺達の交際が認められていた事に気付いたんだ」
「嘘みたい…。昔は猛反対していたのに」
信じられない。
あの冴木さんが私達の交際を認めてくれただなんて。
2年前は最後の最後まで強気な姿勢を崩さなかったから、セイくんとはもう一生縁がなくなっちゃったかと思った。
でも、別れた後も私達の事をしっかり考えていてくれたんだ。
ずるいよ……、冴木さん。
『ありがとう』の言葉だけじゃ足りないくらい、感謝してる。
紗南は冴木の優しさと心配りが積み重なるように身に沁みていくと、涙が枕へ流れていった。