紗南はベッドに上がると、グルリと囲むようにカーテンを閉めた。
見上げた先には懐かしい光景が映し出された。


白い天井
白色蛍光灯
薄いオレンジ色のカーテン


何の変哲も無い光景が、2歳年を重ねた自分にとっては懐かしく思い出深い。






紗南は保健室の独特な香りに包まれると、急に思い出に浸りたくなった。
母校の保健室に来るチャンスなんて滅多に訪れないのだから。



一度ベッドから起き上がると、ベッドの足元に置いたカバンからいつも持ち歩いている星型の飴を取り出し、個装袋を破って飴を口の中に含んだ。

サイダー味が、ジュワッと口いっぱいに広がる。



すると、隙間だらけな心を埋めつくすかのように、自然と瞳に涙が滲み出た。