紗南は驚愕的な事実を知ると、涙の雨がピタリと止んだ。



「えっ!あのクールな冴木さんが?」

「彼女は一見気が強くて完璧主義者のように見えるけど、本当は感情深くて泣き虫なの。学生時代はよく保健室で相談を受けていたわ。1人きりになると、もどかしい恋にひっそり涙してた。今でもよく覚えてる。」



養護教諭は12年前に記憶の焦点を当てて語った。



冴木には芸能科に彼氏がいた事。
第三者の手によって彼との仲が引き裂かれてしまった事。
音信不通になった彼と話し合う為に芸能科に侵入して騒ぎを起こした事。
最後までお互い話が出来ぬまま関係が消滅してしまった事。

騒動を起こした翌年からブレザーの色が変更になった事。




正直、話を聞い驚いた。
彼女の過去の姿はまるで2年前の自分のよう。



「ブレザー色変更の噂話の大元は、あの冴木さんだったなんて信じられない。しかも、芸能科に侵入しただなんて、2年前のセイくんみたい」

「当時、不測の事態に学校中は大混乱を招いた。2年前に騒ぎを起こしたセイを見てたら、歴史は繰り返されてしまうんだなって」


「あの冴木さんが、見境いがなくなるほどの大恋愛をしていたなんて。……意外」



少しずつ見えてきた彼女の内面。
セイくんと引き離そうとしていたあの瞬間は、一体どんな心境だったのだろう。