養護教諭は小さく肩を震わせる紗南を見ていられなくなり、一度話に区切りをつけた。



「……で、今日はどうしてここに?こんな悪天候の中、用がなければ母校に足を運ぶ必要がないでしょ」

「もしかしたら、いま彼がここに来てるんじゃないかなと思って」


「どうしてそう思ったの?」

「実は、彼とは二度の別れを経験をしていて。一度目のお別れは小学5年生でした。当時、彼は約束してくれたんです。『足首が浸かるくらい大雪が降ったら、俺達はまた会おう』って」



何年経っても、昔の約束をバカみたいに守ろうとしている。
約束の有効期限なんてもうとっくに切れているのに。



「そしたら、2年前の大雪の日にこの場所で彼と偶然再会できました。だから、今日もまた奇跡的に会えるかな⋯なんて」



紗南は養護教諭の向こうの窓の外の景色に目線を当てた。
だが、窓ガラスは結露していて外の様子は伺えない。



でも、ここに来る直前はブーツの先端が雪に埋もれていたから、今はもう足首が浸かるくらい降り積もっているだろう。