テレビでセイの帰国報道を目にした紗南は、椅子に置いていたカバンを左手で背負い、食べ途中のお皿が乗っているお盆を持ち上げた。



「……ごめん。急で申し訳ないんだけど。私、急用が出来ちゃったから帰るね」

「え……、まだ授業が残ってるけど」


「私には授業以上に大事な用なんだ。……それじゃあ、また明日ね」

「えっ…ちょっと、紗南~」



紗南は困惑する由莉にクルリと背中を向けると、学食の食器を手早く片付けて建物から外へと飛び出そうとした。





すると、外に立った瞬間、目の前の光景に釘付けになった。


そこは、辺り一面真っ白な銀世界。
空から降り注ぐ雪のシャワーが、降り積もっている雪に厚みを増していく。




滑らぬようにと一歩一歩慎重に雪を踏みしめながら歩いて行くと、ブラウンのロングブーツが雪の中に埋もれていった。