ーー時を遡る事、1時間半前。


KGKの帰国を待つ冴木は、空港の国際線の到着口の出口付近で待ち構えていた。


帰国情報は漏洩していない。


だが、隣や背後にはおよそ30組ほどの記者が、カメラ等の機材を持ち抱えて待機している。





それから、間もなく便は到着。

入国手続きを終えた2人が自動扉の向こうからスーツケースを引いて姿を現わすと、待機しているカメラマンのシャッターが一斉に下された。


冴木はKGKにフラッシュを浴びせるマスコミ取材に先を越されぬようにと、出てきたばかりの2人にすかさず大きな声をかけて引き止めた。



「おかえりなさい。2年間の留学お疲れ様でした」



2人は右方からの第一声が耳が止まると、冴木の方へと揃って顔を向けた。
2年前と何一つ変わらない冴木に思わず顔がほころぶ。



「冴木さん!久しぶり~」



ジュンは冴木に愛想良く手を振る。



「こんな悪天候の中、俺たちの為にわざわざ空港まで迎えに来てくれたの?」

「えぇ、そうよ。スタンドでスタットレスタイヤを装着してもらったから、結構ギリギリの時間に到着したけど、間に合って良かった。2人とも元気だった?」


「勿論。冴木さんは?」

「えぇ、元気だったわ」

「ねぇねぇ、冴木さんがこんなに多くの記者を引き連れてきたの?さっきは、中の動く歩道で散々取材を受けてきたのに」


「…ジュンってば」



2人は到着口のパーティションポールから外れると、あっという間に記者に囲まれた。


冴木はすかさずマスコミとの間に割って入って警護に回る。
2年経っても相変わらずな逞しさを見せる冴木に、2人は思わず顔を見合わせプッとフいた。