「う…そ……」



紗南は消えていくセイの背中を見届けると、全身の力が一気に抜けて、膝から地べたに崩れ落ちた。




もう…。
何もかも手遅れだった。

彼は手の届かない所へ消えて行く。
私の方へ振り向かないどころか、きっと此処へ来ている事さえ知らない。



悔し涙で歪んでいく視界。
強く噛みしめた唇。
太ももから伝わる冷たい地面の感触。


そして、不完全燃焼のやりきれない気持ち。




運命のいたずらは、最後の最後まで私を見放した。






紗南は両手を床について身体を小刻みに震わせながら涙を流す。



「ごめっ………ん…なさい。セイくっ……。最後まで…傷つけて……ごめん…なさい…」



声にならないほどの嗚咽。
床にポタポタと大粒の涙が滴っていく。





セイくん…。

傷付けて、ごめんね。
素直になれなくて、ごめんね。
嘘をついて、ごめんね。
好きだと言えなくて、ごめんね。


謝る事は沢山あったのに、力になれる事は1つもなかったよ。