空港に到着した紗南は、アメリカ行きの全ての便を事前にスマホで調べ上げて、一番フライト時間の近いターミナルのロビーを目指した。
「……っ…はぁっ……はぁっ…」
声が漏れるほど大きく息を切らす。
そして、遠目から正面にある電光掲示板を見て目的の便を確認。
20:30 ロサンゼルス
搭乗便はこれで合っているかわからない。
でも、国際線の出発口付近には若い女子の人集りが出来ている。
もしかして…。
間に合ったのかな。
セイに会える可能性は、会えないと思っていた不安を打ち消した。
そして、一筋の光に望みを託して人集りの方へと駆け寄って行く。
心臓がバクバクと波打ってるのは、電車から飛び出した瞬間から全力疾走した事が原因か。
それとも、彼に会える喜びから来ているのだろうか。
理由はわからないけど、胸に手を当て高まる気持ちを抑え込む。
「………っ…はぁっ…はぁ…はぁ…」
紗南は足をもつれさせながらも出発口へ。
そこに彼が居る。
想像しただけでも、身体中の全神経に稲妻が走ったかのように反応し、後退していた気持ちを前向きにさせた。
ところが、人々の隙間からセイの姿を視界に捉える事は出来たのだが…。
肝心なセイの背中は、ちょうど出発口の奥へと消えて行った。
ーーそう。
あと一歩が間に合わなかった。
1分でも早く空港に到着していれば、きっと間に合っていた。
最後に顔くらいは見る事が出来た。
それなのに、少しばかしタイミングがずれてしまったせいで、会えるどころか壁の向こうへと消えていく背中しか目で追う事が出来なかった。