それは、母親に指摘されて指の腹で涙を拭った時。
ほんの僅かな瞬間テレビから目を離してしまった隙に、彼からの最後のメッセージを見逃してしまったようだ。
ーーそう。
私達は最後の瞬間ですら、すれ違ってしまっていた。
留学が差し迫って厳しい現実に直面した私が、ギリギリの気持ちで『別れよっか』と伝えたら…。
彼から『好きだ』と言われた。
それでも彼の力にはなれないから、小指同士で繋がっている赤い糸をだけを信じて、日本で大人しく待とうと思っていたら…。
彼は見てるか見ていないかわからないモニター先で、私に最後のメッセージを送っていた。
どうしよう⋯⋯。
私、まだセイくんに本心を伝えてない。
それどころか、偽物の気持ちを受け取ったままアメリカに出発してしまう。
本当にこれでいい?
本当に後悔しない?
本当にサヨナラ出来るの?
一橋は紗南を元気付けようとしてKGKの話題に触れていたが、紗南は一橋のエスマークを見た途端、セイが日本に戻ってくるまで封印しようと思っていた気持ちが再び呼び覚まされてしまう。