菜乃花は椅子の横に置いていたカバンを開け、中からミニタオルを取り出して紗南の前に差し出した。



「ほら、早く涙を拭いて。紗南が泣いてるって知ったら、セイくんも悲しくなっちゃうよ」

「……ありがと」



紗南はミニタオルを受け取り涙を拭いた。



「きっとまた会える。2人の運命の赤い糸はしっかりと小指同士で繋がっているから」

「どうして運命の赤い糸が繋がってると思うの?」



紗南は疑問に思い首を傾げる。



「だって、紗南の小指に繋がっている赤い糸を引っ張ったら、セイくんは厳しい規則を破って普通科に侵入したんでしょ?……じゃあ、次はセイくんが赤い糸を引っ張ったら、どうなると思う?」

「え……」



紗南は思わず涙が止まり、一瞬菜乃花の言う通りに想像する。



「小指同士が運命の糸で綱引きをしている間は、先が読めないばかりに辛くてしんどい思いをしてるかもしれないけど、紗南自身がまだこの勝負がついていないと思うのなら、諦める必要はないんじゃない?」



菜乃花は、まだ2人が終わりを迎えたとは思っていない。
最終的に未来が繋がり合ってる事を信じている。



「菜乃花は、セイくんがいつか赤い糸を引っ張ってくれると思う?」

「勿論。秋に保健室で偶然再会したあの時のようにね」



と言って頬杖をつくと、顔を傾けてニッコリと微笑んだ。
菜乃花からの心強いエールは、向かい風から追い風へと変えていった。