ただ、あの侵入事件を起こしてから1つだけわかった事があった。

それは、両科の境界線を超えてはならないということ。



境界線の先は人が羨むような場所ではない。
侵入した人間は、まるで脱獄犯のように手荒く扱われてしまう残酷な場所。

しかも、侵入後の数ヶ月間はまるで囚人のように注意深く監視し続けられた事は言うまでもない。







境界線を超えた者しかわからない苦しみを味わうのは、自分だけで充分。

だからこそ、福嶋 紗南という1人の女の子に、自分の二の舞を演じさせぬように忠告しに行った。



10年前のような悲劇は、もう二度と繰り返されてはならない。

もし、2人の恋がまだ完熟していないのら、これ以上辛い目に遭わないようにとセーブさせてあげたかった。









それなのに、記者会見の時間が迫っているにも関わらず、なかなか校舎から出て来ないKGKを迎えに校舎に入ると⋯。



セイは10年前の自分と同じように侵入騒ぎを引き起こしていた。



一見、10年前のあの日と同じような境遇だったけど、この2人は私達と1つだけ違うところがある。



それは、お互いがお互いの事をしっかり想い合ってるところ。
10年前の自分達には不足していた勇気をこの子達はしっかり持っている。


だから、敢えて手を出さずに最後まで静かに見守っていた。




自身の辛い過去。
そして、心が通じ合っている2人の今を照らし合わせたら自然と涙が溢れていた。