紗南が声楽教室を辞めてから空白だった、約6年間。
俺は毎日のように後悔していた。



『足首が浸かるくらい大雪が降ったら、俺達はまた会おう』



小学5年生だったあの時の俺は、未熟が故に彼女と再会する待ち合わせの場所や時間などいった詳細を決めないまま別れてしまった。




ーーそう。

俺は再会のタイミングを運任せにしてしまった。



先に連絡先を聞いておけば、きっといつでも会う事が出来ただろう。


でも、約束した当初はまさかこんなに長い間会えないなんて思いもしなかった。
1年もしたらお別れの日と同じように街に大雪が降って、偶然出会えて『また会えたね』なんてお互い頬を赤く染めたりして。




あれから、偶然が偶然を重ねて再会出来たけど、俺は度重なる忙しさに飲み込まれて、紗南から教えてもらった電話番号1つに気を緩めてしまった。


直接結び付くものがあれば、今度こそ大丈夫なんじゃないかと変な確信を抱いたまま現在に至ってしまい、6年前のあの時と同じようなミスをしてしまった。



思い返せば話す時間も沢山あった。
でも、肝心な事を話さなかった。




窮地に追い込まれてから気付いた、学習能力のない自分。
6年前のあの時から全く成長してない。

また、以前のように運任せにしてしまったら、自分達は確実に終わる。




本当は、2人の関係はここまでかと薄々気付いているけど、厳しい規則を破ってまで来たからこそ、彼女の心に少しでも何か残していきたい。