「もし、俺の声が届いてるなら耳をすませて聞いて欲しい。……もう二度と後悔したくないから言いたい事だけを言わせて」



セイは瞳に映る事のない紗南の姿を思い描いたまま、2階の廊下を見つめて叫んだ。



1階から2階までKGKを追いかけて来た1年生。

そして、2階に在籍する生徒達までもが授業中の教室から抜け出し、廊下の人ごみの中に紛れ込んだ。

急遽、深刻な事態に巻き込まれてしまった教師達は、廊下に流れ出ている生徒達の収集で手一杯に。



「いつも正直でいてくれたのに、さっきはどうして嘘をついた。どんな話を吹き込まれたか知らないけど、そのまま利口に聞き入れてんじゃねぇよ。話を素直に聞き入れる相手が間違ってんだろ……」



セイの心の中があからさまになると、紗南は何かを察したのではないかと思った。
唇を強く噛みしめると、心の傷がパックリ開いてしまったかのように涙が浮かぶ。



しかし、どんなに気持ちを揺るがせても、自分の立場を痛感してるから、ブレーキを踏み続けなければならない。