オーバーヒート寸前の紗南とは対照的に、ゆっくり身体を起こしたセイは無邪気に笑い右手をすうっと差し出した。



「じゃあ、一緒に寝よっか」



いつもみたくカーテン越しではない。
久々に対面して出たひと言が、『一緒に寝よ』だなんて。




無理……。
顔を見るだけでもドキドキが治らないのに。
先生がいつ戻ってくるかわからない状況下だし、保健室のベッドで一緒に寝るだなんて。

セイくんの隣で添い寝なんてしたら、今度は心臓が止まっちゃう。



「えぇ!ダメだよっ…。セイくんとベッドで一緒に寝るだなんて、絶対無理っ」

「何で……?」


「もうすぐ杉田先生が職員室から戻って来ちゃう。そしたら、私達の交際が学校にバレちゃうよ」



警戒する紗南の目線は、保健室のドアとセイの顔を高速で行き来する。



セイくんは、これがかなり危険な橋渡りだと言う事に気付いていないのだろうか。
保守的な私とは違って、楽観的に考えてるのか焦る様子もない。


一方、紗南の不審な動きを可笑しく思ったセイは砕けたように笑った。



「あはは、そんなにすぐに戻って来ないって。…な、5分だけ」

「えっ…、5分って言われても……」



次は片手で布団を上げてこっちに来いという仕草。


私達は付き合い始めてからまだ2週間程度。
恋人としての進展と言ったら、ベッドを囲むカーテンの下から手を繋ぐ程度。


それなのに。
それなのに……。