「紗南……」
セイはもう一度思い返して欲しいように願う。
「セイくんはこの世にたった一人しかいないんだよ。セイくんの活躍はファンのみならず、事務所のスタッフや先輩後輩、そしてスポンサーやレコード会社の人など多くの人が応援してる。それを、何の取り柄もない私がセイくんの夢を壊す事なんて出来ない」
「俺が芸能人だからって線引きしないで欲しい。それに、これからは仕事も恋も両立出来るように頑張っていくから。」
「でも、私が傍に居たら余計な事を考えちゃう」
「お前の事を考える時間も俺には大事な時間だ」
「セイくん!」
「⋯本気なんだ。再会を待ち望んでくれていたお前と同じく、俺も長い年月をかけてお前を待ち続けた。…だから、もうこれ以上無駄な時間なんて要らない」
と、言ってセイは恋する眼差しを向けた。
ガンガンぶつけてくる感情は、まるでカンカン照りの日差しを浴びるように紗南の心に浸透していく。