彼の温もり。
彼の香り。
そして、彼の腕の力強さ。


頭のてっぺんから足のつま先まで身体いっぱいに彼の全てを感じたら、幸せとは何かと気付いてしまった。




腕の中に収まっているこの瞬間は、温かくて心地良くて、びっくりするくらい幸せで。



このまま何もかも捨てて。

ずっと…。
ずっとずっと、繋がり合っていたい。








でも…。

身体中の全神経にビリビリと電流が流れているかのように、セイくんを好きだと叫んでいるのに…。

私は今すぐこの想いを封印しなければならない。



「俺、人がこんなに愛しいって思ったのは生まれて初めて。例え別れるように仕向けられたとしても、お前の気持ちが向いてる限りは諦めたくないって。絶対に夢を叶えようって思ったのは、大雪の日に別れたお前に成功した姿を見せたかったから⋯⋯」

「………っ」


「だから、これからもずっと傍に居て欲しい…」



セイは紗南の髪に頬を埋めて耳元で小さく呟く。

力を失い垂れ下がった両手は、気持ちに応えたいが為にセイの腰に回したくなっていたが、ギュッと握り拳を作って堪えた。



「…ダメだよ。私が傍に居たらセイくんは大事なものを犠牲にしちゃう」



こんな可愛げのない言い方しか出来ないけど、本当は『私も愛おしいよ』って伝えたかった。