「それと、この前急にスマホが壊れたから、新しいスマホに変えたんだ。だから、最近全然連絡出来なくてごめん」
セイはスマホを取り上げられた事実を語らないどころか、咄嗟に嘘をついた。
勿論、嘘をついたのは紗南を傷付けない為。
紗南は嘘に反応すると、黙ったまま目を大きく開いた。
「……だから、もう一度電話番号を教えてもらってもいいかな。アメリカに到着したらすぐに連絡したいし」
セイはポケットの中から新しいスマホを取り出し、紗南に番号を教えてもらう前提で電話帳アプリを開いた。
内心ホッとしていた。
短時間で紗南に伝えたい事を伝えたし、肝心な電話番号の件まで話を持っていけたから。
紗南は複雑な心境になった。
まさか、スマホの件で嘘をつかれるとは⋯。
真実を知っている分、決して誤魔化されない自分がそこにいる。
紗南は下を向き、テーブルの下で作った拳をギュッと強く握りしめた。
「私の電話番号は…⋯⋯」
「うん」
セイは頷いた後、右人差し指をスマホ画面に向けた。
「教え……られない」
「え……」
セイは紗南からの予想外の返答が届くと、指先がピクッと揺れた。
一瞬聞き間違いかと思い、紗南へと目線を向ける。
すると、紗南は再び口を開かせた。
「セイくん」
「ん……?」
「私達………、別れよっか」
セイは我が耳を疑うような展開を迎えると、まるで時が止まってしまったかのような錯覚に陥る。