ーー今日は留学出発日の前日。

俺は明日午後便の飛行機で日本を発つ。
ジュンと共に2年間のダンス留学の旅に出る。

これは、将来に向けて息の長い歌手生命を送る為に、自分達の意思で決断した長旅だ。




必要最低限の荷物は宅配便で送った。
後は必需品を持って、明日飛行機に搭乗する。



約2年間通い続けていた学校に登校するのは、修了式を待たずに今日で最後となる。
留学が決まってから今日まで本当にあっという間だった。







通常よりも30分ほど早めに登校していたセイは、廊下側に設置されているロッカーの中の荷物を持参した大きめのスポーツバッグに詰め込んでいた。


すると、しゃがんでいるセイの隣に大きな人影が映し出された。
セイは気配に気付いて隣の人影へと顔を見上げる。



「セイ……、ウィっす。今日で学校最後だな」



隣のクラスに在籍しているジュンは、明るい声を降り注がせた。



「お前、もう荷物をまとめ終わったの?」

「いいや、まだこれから」


「今日は12時からホテルで記者会見だから、時間があるうちにさっさと荷物をまとめろよ。後で先生達への最後の挨拶もしなきゃいけないし」

「まぁまぁ、そんなに焦るなって。俺は最後の学生生活をもう少しだけ堪能してから荷物をまとめるよ」


「はぁ?学校にはあと数時間程度しか居ないのに、ギリギリになって学生生活を堪能かよ。今日はお前が思ってるほど時間ねぇから」



セイは呑気なジュンに呆れると、再びロッカーの中に手を突っ込み作業を続けた。