教室へと戻って来た紗南の異変に気付いた菜乃花は、昼休みの時間にお弁当袋を手にして、紗南の手を引き屋上へとやって来た。



瞼を腫らして赤く充血している目と、元気のない様子が無性に気になる。
菜乃花は親友として力になりたかった。



「さっき、保健室で何かあったの?彼に会えたの?」



お弁当箱を開きながら問いかける菜乃花に対し、紗南は表情を落としたまま無言で首を横に振る。



「明後日には日本を出発だから、学校に来れたとしても明日までだよね?」

「……うん。明日まで学校に来るはず。彼の月間スケジュールにはそう書いてあったから」


「でもさ、スマホを解約してるんじゃ、こっちから連絡をつけようがないね。……これからどうするつもりなの?」



彼と出会った当初からずっと恋路を見守ってくれていた菜乃花には、彼に纏わる話を全て伝えていた。

先日、校門まで迎えに来た冴木さんとのその後の話や、急に繋がらなくなったスマホの話までは知っている。

でも、先ほどの保健室の話はまだ伝えていない。



「……これから…か。私……、どうしたらいいんだろうね。わかんないや」



紗南は声を震わせながら先ほどの会話を頭の中に巡らせていると、ツーっと涙が頬を伝った。