「実は最近塾を辞めて家庭教師を雇ったんだ。母親が塾に通う時間が勿体ないからって」

「確か紗南は医大を目指しているんだよな。⋯まさか、雇い始めた家庭教師って男?」


「どうしてわかったの?」

「何となくそうかなって。もし男だったら嫌⋯⋯だから」



セイは両手で後頭部を支えて天井に目を向けながら素直に吐露した。



「…もしかして、ヤキモチ妬いてくれてるの?」



気持ちの歩み寄りに幸せのバロメーターが右肩あがりになった。
そしたら自然と声が震えた。

自分から先に彼の気持ちを引き出すなんてズルいかもしれない。



返事が気になるあまり左側のカーテンに目を向けたけど、当然姿は見えない。

でも、彼からの反応に期待を寄せている自分がいる。