キーンコーンカーンコーン~♪
2時間目開始のチャイムが鳴った。
もうこの付近に生徒の姿はない。
私と冴木さんの2人だけ⋯⋯。
だから、彼女は周りを気にせず語り始めた。
「ねぇ、セイの電話が急に繋がらなくなった理由、貴方にわかる?」
そんなのわからない。
理由がわかっていたら、こんなに深くは悩んでない。
「機種変……ですか」
取り敢えず可能性がある回答を述べてみた。
SNSに投稿出来る端末を持っているのだから、自分の中では機種変が濃厚だった。
「いいえ、私がセイのスマホを取り上げて解約したの」
「えっ!解約したって⋯⋯。どうしてですか?」
紗南は突っかかるような口調で詰め寄り、針のように神経を尖らせた。
「先日までセイが使っていたスマホは事務所からの貸与品なの。契約時にセイの住所が特定したら困るからね。勿論、解約をしたのは出国前に貴方との連絡を断ち切る為」
眉一つ動かさない冴木の口調は相変わらず厳しい。
紗南は驚愕的な真実を知ると、まるで氷水を浴びたかのように血の気が引いた。
嘘……。
スマホを解約したのは私のせい?
しかも、解約理由が私との連絡を断ち切る為?
どうりで電話が繋がらないはず。
あのスマホが事務所からの貸与品だった事も知らなかった。
……待って。
セイくんと連絡がつかないって事は、約束が出来ないって事だよね。
約束出来ないって事は、もう二度と会えないって事?
嫌……。
そんな一方的な引き離し方なんて受け入れられない。
ドクン…… ドクン……
身体が揺れ動きそうなほど大きな鼓動が打った。
冴木さんはどんな手を使ってでも仲を引き裂くつもり。
セイくんから離れるように警告しに来ただけじゃ満足しない。
仕事現場まで私を連れて行ったり、ぎっしりと書き詰められたスケジュール帳を見せびらかしたり、セイくんが今まで使用していたスマホを無理矢理取り上げたり。
酷い…。
私達2人の中を引き裂く為にここまでするなんて許せない。