どうして冴木さんがこんな時間に学校へ⋯⋯?



紗南は冴木の登場に驚いたが、2度に渡って警告を受けていたからこそ思うものがあった。



額に汗が滲む。



タッ⋯⋯タッ⋯⋯タッ⋯⋯タッ⋯⋯



メトロノームが拍子を刻むように響く足音。
少人数だけど他の生徒も行き交う廊下。

まるで彼女だけをフォーカスしているかのように、自然と他の光景をぼやかせていた。



鉛のように重くなった足を1歩1歩進ませていると⋯⋯。
冴木は紗南の存在に気付き、壁から離れて紗南の3歩手前で足を止めた。



「先週はどうも。またここで会うなんて偶然ね」

「……」



嫌味ったらしい口調に、紗南は視線をストンと落とし固く口を結ぶ。



「顔色が良さそうに見えるけど、保健室に何の用?……もしかして、セイに会いに来たの?連絡がつかないから」

「なっ……」



紗南はピンポイントなご指摘に心の波風が立つ。
冴木は鉄仮面のような表情を一切崩さない。