一方のセイは、紗南と同じく保健室に行けば会えるような気がしていた。
連絡手段を失ってから気付いた落とし穴。
つい最近まで使っていたスマートフォンがまだ手元にあった頃、別のところに大事な番号を書き写しておけば良かった。
まさか、あんなにあっさり回収されるなんて思っていなかった。
出発前に紗南と話したい事が山ほどある。
何処に住んでいるのか。
普通科の何組に在籍しているのか。
今まで付き合った人はいるのか。
先日はどうして家庭教師の男と抱き合っていたのか。
もし運良く会えたとしても、実際は時間の都合上一番大事な話しか出来ないだろう。
ーーこれが現実。
でも、顔が見たい。
声が聞きたい。
日本を発つ前に紗南に会いたい⋯⋯。
ここ最近は2時間目までしか学校に居られないけど、今日はその中の1時間分を割いて保健室に出向いた。
学校に来るのは明日まで。
自分に与えられたチャンスは2日間だけ。