「そ……だね……」



紗南のか細い声は、2枚のカーテン越しからセイの耳に⋯。
セイは哀愁漂う眼差しで天井を見つめた。



「ごめん……」

「ううんっ…、謝らないで。こうやって会えるだけでも嬉しいから」



小さなワガママでも迷惑かかるのは充分にわかってる。
だから、気丈に振る舞い理解ある彼女を演じた。






でも、海外公演の時みたいに長期間会えなくなるより、こうやってカーテン越しに会えるだけでも嬉しい。

会えない時間は、募りゆく悲しみが過去の喜びをかき消していたから……。



今は彼の私物を表す★マークが書かれている上履きがベッドの脇に並んでいるだけでも安心だし、カーテン越しから彼の声が聞こえるだけでも幸せだ。