すると、ちょうど生放送を終えたようでKGKの2人は席を立ち、順番にDJの人物と握手を交わした。
セイは去り際に窓の向こうで観覧していた女子達に手を振り終えると⋯⋯。
まるで紗南の事を頭の中に思い描いているかのように指先でSマークを象り、スタジオの奥へと去って行った。
Sマークは紗南への特別なメッセージ。
勿論、セイは紗南が遠目から見ている事を知らない。
にも関わらず、当たり前のようにサインを送る。
サインの意味など知らないファン達は、定番化したSマークに喜び、黄色い声援を浴びせている。
紗南は酷く驚いた。
モニターに映される訳でもなく、声で届けられる訳でもない。
自分の見ていないところでもSマークは送り続けられているという事実を知ったのだから。
一方のセイは、まるで指先にクセが付いてしまっているかのように、日常的にSマークを送り続けていた。
所構わず、
紗南が見ていなくても、
どんな時でも…。
一瞬、握り潰されてしまったかのように胸が苦しくなった。
彼のSマークを見た途端、冴木さんの言ってる意味がじわじわと伝わってきた。
彼の運命の手綱を握っているのは、もしかしたら自分なのかもしれない。