「昨日、セイが1ヶ月だけ留学を先延ばしにしてくれないかってお願いしてきたの」

「え……」


「正直、私も驚いた。半年前から留学を心待ちにしていたのに…。でも、セイが急に心変わりした原因は一体誰のせいかしらね」



冴木は手元のコーヒーから目線をなぞるかのように冷たい目で紗南の瞳を見つめる。
すると、紗南は矢を射止められた的のように目線を外す事が出来なくなった。

何故なら、冴木が指し示しているその誰かとは、自分自身だと確信したから。





私がセイくんの未来の邪魔をしている⋯⋯?
セイくんは、私が原因で留学を1ヶ月も先延ばしにしようとしているの?

嘘でしょ……。




セイの思いが明らかになると、紗南は自責の念に駆られたまま再び目線をスタジオの方へと向けた。