帰り道はなんだかあっという間で、気が付くと空港に行く前に理斗君と待ち合わせた駅まで来ていた。

空港で最後に理斗君が言ってくれた言葉は凄く嬉しくて心が温まったのに、その効果が切れるのはあまりに早かった。

ここからバスで帰れば10分ほどで家に着くのにバスには乗らず家に向かってとぼとぼと歩き出す。

人の声を聞いたりお金を払ったりすることを想像するだけでなんだか面倒に感じた。

言い表しようのない脱力感の中、ただ足を前へ前へと出した。

このままアスファルトに飲み込まれてしまいそうなくらい全身が重い。

知っているはずの場所なのに、まるでひとり知らない場所に置き去りにされたような感覚になった。

頭の中も胸の中も理斗君で溢れているのに、どこにも隙間なんてないのにまるで空洞があるかのように低くこもったような音が響いている。

次第にその音は周りの音を掻き消すほど大きく響きだす。

「駄目だわたし……2年間も……耐えられないかも……」