全てを話してしまった…‥

もう後戻りはできない…‥

香織の中にある僕の記憶は、あと数時間で全て消えてなくなってしまう。

それから僕は、いつ追いかけてくるかわからない香織から逃げるように大学を飛び出し、駅までの道のりをあえて遠回りをして向かった。

歩いていると涙が自然と流れ頬をつたっていた。

何もない道を1人きりで歩いていると、香織の顔ばかりが脳裏をよぎって涙が止まらなかった。

とても電車に乗って帰れるような状態ではなかったので、駅の近くにある公園で気持ちを落ち着かせる事にした。

公園に着くと、夕方の5時過ぎという事もあり、遊んでいる小学生や子供連れの人は誰1人としていなかった。

そしてブランコに腰掛けると直ぐに、この公園に来てしまった事への後悔の念にかられた。

それは、この公園が僕にとっても香織にとっても特別な思い入れのある場所だったからだ。

電車が来るまでの時間潰しや、授業がない時や授業が休講になった時は2人きりになりたくて、よくここに来た。

でも、ここには僕1人で来た事は1度もなかった…‥

僕の隣には必ず香織がいた…‥

だから今も振り向くと隣に香織がいて、微笑んでくれているような気がした…‥

来るんじゃなかった…‥

ここにいると、そこらじゅうに香織の残像が見えてしまう…‥

香織の僕を呼ぶ声が聞こえてしまう…‥

ここだけじゃない…‥

過去に2人で行った場所や過ごした場所、どこにいようと、どこに逃れようとも香織の姿が見えてしまうに違いなかった…‥

そして僕はブランコに座ったまま、両手で覆った顔を膝に押し付け泣き出した。

「菊地くん?」

香織かと思い慌てて振り向くと、何故かそこには瞳の姿があった。

「瞳…」

僕は、すぐに涙を拭い平静を装った。

すると瞳は、もう片方のブランコに座った。

「こんな所で何してたの?」

「別に何もしてないよ。電車が来るまでの時間潰しだよ。瞳こそ何してるんだよ?」

「私も菊地くんと同じ…。それより菊地くん目が真っ赤だよ。もしかして泣いてた?」

「そんなんじゃないよ…」

相変わらず人を見る観察力と勘は、ずば抜けていた。

「恋人と別れたとか?」

「・・・・・」

「ヤだっ。当たっちゃったの? っていうか菊地くん恋人いたんだ?」