僕が、リリの魔法を使い香織と付き合い始めて、1年と5ヶ月が経った。

一時は香織の未来の為に別れようと考えた事もあったけど、香織の言葉で僕は苦しみから解放され救われた。

香織の僕への想いが、何年、何十年かかっても構わないから、いつかは本物へと変わってくれる事を願った。

また…それとは別に気がかりなのは、瞳の事だった。

瞳の中には未だにリリがいる。

瞳の事はリリに任せているけど、あまりにも長すぎる。

このまま戻って来ないんじゃないかと不安になる。

だから僕は大学に行くと必ず瞳に会いに行く。

例え中身がリリであっても、顔を見るとホッとするからだ。

そして今日も瞳に会うために、いつも瞳が座っている食堂のテーブル席に向かっていた。

でも瞳の姿はなかった。

とりあえず、しばらくの間、近くの席に座り待つ事にした。

特にする事もなかったので、読みかけの小説を鞄から取り出して読み始めた。

しばらくすると後ろの席から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「香織はホントに菊地くんの事が好きだよね」

「私たちは大学生なのよ。愛とか恋とか言ってる場合じゃないわっ」

僕の話をしているのは香織の友達の大谷さんのようだ。

そして一緒にいるのは僕が苦手とする前原さん…‥

香織はいないようだ。

どうやら今、授業を終えて食堂に来たようだった。

僕は気付かれないように、少しばかり身を縮めた。

「香織と菊池くん、お似合いだと思わない?」

「あの2人の話しはしたくないんだけど…」

前原さんは僕と香織が付き合っているのを、よく思ってはいないらしかった。

「どうして香織と菊地くんの事、認めてあげないの? 香織の事を好きだから?」

「好きよ。友達としても女性としても…」

どういう事?

前原さんて…‥

「私は、それってありだと思うけど、香織が聞いたらドン引きだと思うの。でも、さっきは聞こえてなくて本当によかったよ。聞こえてたら、やばかったもんね」

「ちょっと気を付けてちょうだい。まぁ、別に聞こえてたって構わないけど…。それに香織自身、言わないだけで薄々勘付いていると思うわよ」

「私もそう思う。それでも聡子を嫌いにならないし、以前と何も変わらないで接している。普通わかったら少し距離を置くと思うけど…」

「香織も実は、私の事好きなんじゃないかしら?」