「おい、大丈夫か」

 珍しく少しだけ気遣わしげなサルヴァドールの言葉にも、今は返答できなかった。

「……う、う」

 吐き気と頭痛、それから悪寒。
 なのに肌の表面はじんじんと焼けるように熱くて、ずっしりと被せられた毛布を剥ぎたくなってしまう。

(油断した。あれぐらい平気だと思ってたのに、まんまと風邪を引くなんて)

 いつクリストファーが庭先に現れてもいいようにと、寒い窓際でスタンバイしていたのもまずかった。

 たったの二週間程度でも5歳の体には相当な負担をかけたようで、私は昨日から高熱にうなされている。

 幸いというべきか、原因ははっきりとわかっているので、大人しくベッドに横になっているんだけど。


(どうしよう……死ぬほどつらい。喉も痛いし、鼻水が詰まってうまく息ができない。風邪ってこんなに苦しかったっけ)

 生理的な涙がぽろぽろと目尻を伝う。
 眠ることもできず、私はサルヴァドールをぎゅっと握りしめていた。