銀雪の海に溺れていた。

 手足の感覚はずいぶん前になくなっていて、灰色の空からは次々と雪が降り注いでいる。

「おと、さま……」

 呼んだところで、あの人は来てくれない。
 呼んだところで、あの人は見てくれない。

 次第にまぶたが重くなり、眠気に襲われる。
 その時、霞みゆく視界の先で黒い影が揺れ動いた。

「おとう、さま」

 その人は、じっと私を見下ろしている。
 似たような銀色の髪を靡かせ、感情を消し去った青の瞳で。

「……」

 声をかけることもなく、助け出すこともなく、ひどく冷淡な眼差しで静かに眺めていた。

 最後の力を振り絞って、手を伸ばす。
 躊躇うような気配を感じたあと、腕を掴まれ、強い力で引き起こされた。

 限界がきて、目を閉じる。

 ゆらゆらと温もりに包まれながら、私はそっと意識を手放した。

 お父様、どうか私を――