七月の下旬。

 夏休みに入った。


 今日は私、空澄(あすみ)、凪紗、心詞(みこと)、響基の五人で夏祭りに来ている。


 夕方までは屋台をまわり。
 今は二十時ごろから打ち上げられる花火を見るため、ある場所へ向かい着いたところ。

 その場所は。
 現実の世界と『心が呼吸できる世界』を繋ぐ真っ白な光の出入り口が見えていた公園。

 この公園は今から見る花火がとてもきれいに見えるらしい。
 このことは、ほとんど知られていなく穴場スポットでもあるとのこと。
 これは空澄が教えてくれた。



「……見えないな、やっぱり」


 凪紗の言葉に私、空澄、心詞、響基も、ある一ヶ所を見ながら頷く。


 見えない。
 それは。
 現実の世界と『心が呼吸できる世界』を繋ぐ真っ白な光の出入り口のこと。


『心が呼吸できる世界』を卒業してからも、名残りで空澄と日の入り後にこの公園を何回か来たけれど、その出入り口が見えたことはなかった。

 確かに『心が呼吸できる世界』を卒業したら、その出入り口は見えなくなると惺月(しずく)さんが言っていた。


 だけど。
 そうじゃない。

 私たちの視界には『心が呼吸できる世界』や『心が呼吸できる世界』に繋がる真っ白な光の出入り口、そして惺月さんのことが見えていなくても。

 存在している、確実に。
 私、空澄、凪紗、心詞、響基の中では。



 あのね、惺月さん。

 私、見つけたよ。
 現実の世界でも『心が呼吸できる場所』を。
 それは家族や仲間、そして恋人の空澄と一緒にいるとき。

 こういう場所ができた。
 それも惺月さんや『心が呼吸できる世界』のおかげ。

 惺月さん、『心が呼吸できる世界』。
 本当にありがとう。


 これからも現実の世界で『心が呼吸できる場所』を一つでも多くつくっていきたいし大切にしていきたい。



 そう思ったとき。
 夜空に大きく色鮮やかな花火が連続して咲いた。


 私、空澄、凪紗、心詞、響基は、そんな花火を感動しながら見つめていた。





 *end*