侯爵領に出没していた賊をミドルダム侯爵が主導して捕え、その功績を元に娘のアレットと僕との婚約に結び付けたいというのが、父上の思惑だったらしい。侯爵がモタモタしていてくれたおかげで、僕とアレットとの婚約話はまだ進んでいなかった。

 今回の一件で賊を制圧できなかったミドルダム侯爵の肩身は狭くなり、放っておけば自然に婚約の話はこのまま立ち消えとなるだろう。

 それにダンシェルドとの国交が再び結ばれるならば、エステルとの婚約を結び直すことができるのではないかと、僕は父上に詰め寄った。

 しかし五年もの間、ダンシェルドとは一切の交流がなかったのだ。僕の愛しいエステルが今どのような生活を送っているのか。彼女に関する情報は、何一つなかった。


「もしかしたら、エステルはもう別の相手と結婚しているかもしれないぞ」


 兄のアンドリューが意地悪く言う。