「お嬢様、そろそろ元気を出してください。お嬢様が悲しい顔をしていると、私も悲しくなります」
「そうは言ってもね……」
「あれからもう二週間も経つのですよ?指の怪我も治りましたし、そろそろ笑顔を見せてください」
はあ、ともう何度目か分からないため息をついて目の前の秋桜をちょんと指でつつく。
ひんやりと冷たい風が頬を撫でて通り過ぎていった。
「だからお稽古は嫌いなのよ。上手にできれば、嫌になることなんてないわ」
唇を尖らせて洩らせば、すぐさま九重がフォローに入る。
「ですからお嬢様。裁縫などする必要がないのですよ」
「だめよ。花嫁修行に裁縫は必須なのだから。将来の旦那様だって……」
「問題ありません。そんなことはありえません」
この会話、いったい何度目なのか。
たぶん、両手の指の数では数えることができず、足の指まで使わなければならないほどだと思う。