翌日は、晴天に恵まれた。ビアンカは、実家へ行って着付けをしてもらってから、武芸試合の会場へ向かった。同じくおめかしした、ルチアとスザンナも一緒である。二人は、付いて来たいと言い張ったのだ。

 会場内には、ボネッリ領の全騎士が勢ぞろいし、早くも熱気に包まれていた。皆、やる気がみなぎっている。それもそのはず、武芸試合といえば、出世の近道である。特に今回は、ステファノの目に留まれば、王立騎士団へスカウトされる可能性もあるのだ。

 とはいえ、騎士たちから漏れる囁きは、「賞金が……」「牛が食いたい……」というものだった。優勝者には、賞金と景品の牛一頭が与えられるのだ。貧しいこの地域の騎士たちにとっては、出世よりも、目先の金や食物の方が魅力的らしかった。

(アントニオさんたちは、どこかしら……)

 五人を捜していると、その矢先に声をかけられた。

「あら、ビアンカ!」

 エルマだった。見物席から、走り寄って来る。それに気付いたのか、五人も集まって来た。

「エルマさんも、見に来られたんですね」
「当然。可愛い寮生たちの、晴れ舞台だもの。……牛も懸かってるしね」

 エルマは、ぎろりと五人を見すえた。

「そのドレスはどうしたんだい?」
「妹が仕立て直しをしてくれて、着られるようになったんです。二度もお借りしなくてすみましたわ」

 やはりバストはきついが、一日くらいしのげるだろう。エルマは、安心したように頷いた。

「それはよかった」
「エルマさん、皆さん、初めまして」

 ルチアとスザンナは、それぞれ名乗ると、行儀良く挨拶した。

「姉がいつもお世話になっております」
「いやいや! お世話してもらってるのは、こっちだからさあ」

 待ちきれなさげに口を挟んできたのは、ジョットだ。彼は、興味津々といった様子で二人を見比べた。

「俺はジョット、よろしくね。……ああ、ルチアちゃんの方が、ビアンカちゃんに似てるんだね。スザンナちゃんは……、これは成長が楽しみって感じ!」

 ルチアはビアンカに似て、地味な顔立ちなのである。スザンナは、三姉妹の中で、最も顔立ちが華やかなのだが……。

(ジョットさん、微妙に失礼だわ……)