「それって、まさか……!?」

 ああ、とアントニオは頷いた。

「王立騎士団に入団させていただくよ」
「本当に!?」

 ビアンカは、思わず念を押していた。アントニオが、もう一度頷く。

「実を言うと、ステファノ殿下がここへ来られた当初から、気持ちは動いていた。殿下は、国王陛下のパッソーニ家への仕打ちについて、真っ先に謝罪されたんだ。とはいえ、即座にイエスと答えるのも癪だからな。なかなか、素直になれなかったのだけれど……」

 アントニオは、ビアンカに一歩近付くと、手を取った。

「ビアンカ、あのな……」

 その時、わあっと歓声が上がった。

「おめでとう!!!」

 叫びながら厨房へ走り込んで来たのは、チロだった。力一杯、アントニオに抱きつく。

「俺らが団長が、王立騎士団に加わらせていただくなんて! 誇らしいぜ!」

 チロは、感激のあまり袖口で目頭を拭っていた。続いて入って来たジョットが、苦笑する。

「チロ~、もうちょっと待っててやれよ。いいムードだったじゃんか。アントニオだって、お前よりビアンカちゃんに抱きつかれたいだろうよ」

「あ、そうだよな! でも、嬉しすぎて……」

「そうだよ。こんな名誉があるかっての!」

 ファビオとマルチェロも走り込んで来た。どうやら、四人そろって立ち聞きしていたようだ。一斉に、アントニオを取り囲む。皆でわあわあ騒いでいると、おごそかな声がした。

「パッソーニ殿、入団するという言葉は、(まこと)か」

 何と、厨房までステファノがやって来たのだ。アントニオに抱きついていた四人は、パッと離れると、姿勢を正した。四人とも、さすがに顔に緊張が走っている。気の小さいファビオなどは、白目をむきかけている。失神しやしまいか、とビアンカは脇で見ていてハラハラした。

 アントニオは、ステファノの前に進み出ると、ひざまずいた。

「このような名誉にあずかり、光栄に存じます。是非、王立騎士団の一員として、お仕えさせてくださいませ。誠心誠意、尽力する所存です」