「ビアンカ嬢?」
「ビアンカ!」

 ステファノとアントニオは、同時に声を上げた。

「体調は、大丈夫なのか?」
「ハイ、もう万全です。ご迷惑をおかけしました」

 ビアンカは、丁重に礼を述べた。

「お昼から、ずっと食事もなさらずに話し合われていると伺いました。栄養を補給された方が、脳の働きも活発になられましてよ?」

「何を、生意気な! 大体、腹など空いては……」

 ドナーティは目をつり上げたが、次の瞬間、彼の腹は盛大に鳴った。ステファノが、クスリと笑う。

「ビアンカ嬢の言う通りだな。パッソーニ殿、一時休戦として、腹を満たすとするか」
「さようでございますね」

 アントニオも頷く。ビアンカは、三人の前に料理を並べ始めた。ステファノがこちらを見る。

「ビアンカ嬢こそ、何か食べたのか。ずっと、熱に浮かされていたと聞いたが」

 そういえば、一日眠っていたため、何も口にしていない。まだだと答えると、ステファノは同席するよう言った。

「一緒に食べるがよい。……ああ、ドナーティ。食事中は、引き抜きの話題は封印するぞ。リラックスしないことには、栄養も吸収されないと聞くからな」

 そう言ってステファノは、ビアンカに微笑みかけた。ドナーティは渋々といった様子で、頷いたのだった。

 ドナーティがステファノの隣に座っているので、ビアンカは彼らと向かい合うように、アントニオの隣に腰かけた。こうして、奇妙な四人のメンバーでの食事が開始した。