どうも、おはようございます。コレット・リードです。

 長年にわたって婚約しておりましたレオナルド・ブランデール王太子殿下が、昨日少々おかしくなられたようでして。急に私のことを『愛してる』とか言い始めたわけです。今まであれだけ人のことを手下としてこき使っておいて、突然そんなことを言われても困ってしまいます。

 何とか説得して王宮にお帰り頂いたのですが、「ちゃんと説明するから明日王宮に来い!」だそうです。午前中の授業も、気が重くてなかなか頭に入りませんね。


「ねえ、コレット。すごく深刻そうな顔をしているけどどうしたの?」
「大丈夫よ、何でもないわ。それよりリンゼイはとっても元気そうね! 何かいいことがあったの?」


 リンゼイは顔を赤らめて、私を廊下に連れ出しました。リンゼイは休まずに授業に来られているし、顔色もとても良いです。これも、エリオット様との恋の力でしょうか。廊下の窓の横で、リンゼイは私に耳打ちします。


「あのね、エリオット様からプロポーズして頂いたの」
「……えっ? 早っ!!」


 いやだわ、私ったら。そこはまず、「おめでとう」って言ってあげるところなのに、ついつい驚いてドスのきいた声を上げてしまいました。
 でも、リンゼイとエリオット様がお付き合いを始めたのはつい先週のお話じゃなかった? 早速この週末にデートで滝行(たきぎょう)に行くって言っていたけれど、それにしても早すぎませんか?


「デートの帰りにそのままエリオット様がお父様とお母様に挨拶に来て下さったの。それでトントン拍子にすすんじゃって。でもマティアスお兄様だけが首を縦に振らなくてね」
「そうなのね。きっとマティアスも寂しいだけよ。リンゼイ、おめでとう! 前にも言ったけど、あなた達とてもお似合いだわ」


 恥ずかしそうに笑うリンゼイ。幸せそうなリンゼイを見られて、私もとても嬉しいです。いつの間にか私の失恋の傷もすっかり治ったようですね。心から、二人を応援したい気持ちです!


「それでね。今週末に、スペンサー領にも連れて行って頂けることになったの。馬もたくさんいるし、近くに湖もあるんですって!」


 知ってる。それ、私が落ちた湖だから。


「スペンサー領に行くなんて素敵ね。私も昔、家族で滞在させて頂いた事があるわ。空も広くて森もあって、とても良いところだわ」


 リンゼイが学園を卒業したら、二人は結婚するのかしら。素敵だわ。きっと結婚式は夏ね。ブーケプルズの代わりに、紐を引くと上から水の入ったタライが落ちてくるっていう『タライプルズ』はどうかしら。

 きっと、あの二人らしいお式になるわね。

 さあ、気持ちを切り替えて、私は王宮に向かうとしますね。