私がそれを見つけたのは、レオ様が三ヶ月の間王都を留守にし、地方の視察に行っている間のことでございます。


「メイ、五寸釘って知ってる……?」


 私は、いつものように私の髪を乱暴に整えているメイに聞きました。


「五寸釘って言えば、あの呪いの藁人形のやつじゃない? さすがにこの世界には、そんな呪いの伝説ないと思うけど」
「そう……そうよね。前世の話よね。ありがとう」


 (うし)(こく)参りの伝説は、私やメイが前世を生きた日本での話だと、私も分かってる。
 丑の刻参りに使う道具といえば、呪いの藁人形と五寸釘でしょう? 丑の刻に、呪う相手を藁人形に見立てて、神社の御神木に五寸釘で打ち付ける。
 呪われた相手は確か、七日目にあの世行き。

 でもね。

 そんな恐ろしい呪いの道具である五寸釘と藁人形を、私が今世で見つけてしまったと言ったら……?
 しかも……執務室の、レオ様の机の引き出しから。


 これは大事件よ。


 今、レオ様は地方都市の視察のため、しばらく王宮を留守にしています。その留守の間に、ジョージがどうしてもレオ様に提出した書類を修正したいから返してくれと言ってきて、仕方なく漁ったの。レオ様の机。

 誰もいない執務室で、勝手に人の机の引き出しを漁る背徳感にワクワクしながら、一番上の引き出しを開けた。

 そこに入っていたものは、

少し錆びたような、碧く光る太い釘
枯れた草やツルで作られた人形
人の名前がびっしり書かれたメモ

 しかも、名前のリストはなぜだか上から順に一本線で消し込みされている。