本編 第19話 「王太子と初めてのキス」のレオナルドsideのストーリーです。


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 自分で言いたかったのに。

 九年も拗らせた俺のコレットへの想い。

 好きになった時にはコレットには既に憧れの片思いの相手がいて、決死の覚悟で「可愛い」と伝えたら大声を上げて逃げられ、過去のことを謝ったら慰謝料をくれと言われる。

 そんな苦難を乗り越えてやっと告白しようとしたら、ジェレミーが俺の気持ちを要約してサクッと伝えやがった!

 挙句の果てにコレットには、『お友達から始めましょう』と突き放される始末。

 ……俺、一応王太子だぞ?
 九年婚約してるんだぞ?

 納得のいかない点も多々あるが、仕方ない。想いを拗らせすぎて、コレットに冷たく当たってきた俺が悪いんだから。そうやって俺は、『お友達から始める』ことにした。

 そんな俺に、今人生最大のチャンスが巡ってきている。

 見てくれ。
 ……コレットが俺の手を握っている。

 いやいや仮にも婚約者なんだから、手を握ったことくらいあるよ。子供の時はよく手をつないで歩いていたし、エスコートする時やダンスの時に、絶対握らないとダメだろ。しかも、手を握られたくらいでウハウハ喜ぶほど、俺はガキじゃない。

 重要なのは、手を握る必要性もないのに、コレットの方から俺の手を握っているという事実。

 これは、『お友達』から『恋人』に昇格したという合図なのだ! 異論は認めない!


「俺と手を繋いだな」


 コレットは、きょとんとした目をしている。まさか、忘れたわけじゃないよな。


「友達同士は手を繋がないんだったな」


 もう一押しだ。ああ、もうコレットの唇しか目に入らない。なんなんだ、この色白の肌に映えるピンク色の柔らかそうな唇は。おい、ズリズリと後ろに逃げるな。


「……キスさせて」


 もう俺から逃げないでくれ。絶対にコレットの事を守ってみせるから。もう、観念して俺と結婚すればいいじゃないか。いくらでも責任は取るぞ。
 馬車の壁際まで追い詰めて唇を近付ける。鼻と鼻が触れた時にコレットが一瞬ビクっとして、彼女の緊張が伝わってくる。


「……三秒ルールでお願いします!」


 は? 三秒ルール? この期に及んでキスを三秒で止めろと?
 目の前で一生懸命に、謎の『三秒ルール』を説明し始めるコレット。

 ……おい、それは逆効果だ。
 そうやって茶化して緊張を誤魔化そうとするところも、俺は大好きなんだから。

 延々としゃべり続けるコレットの唇を、俺はそっと塞いだ。