「今日はとんでもない話題になりましたね」
「俺の母が変な事を言ってすまなかった……コレットの両親の前でする話ではなかったな……」


 できればこの時をひっそりと迎えたかったのに、図らずもみんなに盛り上げられてしまった本日の開幕戦です。
 無理……無理よ。緊張しすぎて。
 二人きりの何とも言えない雰囲気に耐えられず、私は話題を変えます。


「そう言えばメイが、今度こそ王宮で誰かお相手を見つけるぞって息巻いてますよ」
「メイか。俺の周りにはさすがに良い相手はいないな……みんなメイに攻略されまいと必死になってたやつらばかりだから。黙っていたら可愛らしい顔なのに勿体ないな」
「メイが黙るなんて、無理でしょうね」


 メイの話も終わってしまいました。次の話題、次の話題……ああ、気まずい。


「あっ、そうだ! エドワード様もすっかり首もすわって、あやすと笑ってくれるようになりましたね。とっても可愛らしいです」


 今日のお披露目パーティーでも招待客に可愛い笑顔を振りまいて、みんなをメロメロにしていたエドワード様。少し伸びてきた髪は、レオ様と同じ綺麗な金色です。


「こんなに弟が可愛いなんて思わなかったよ。エドワードを抱っこし過ぎて癖がついたのか、気づくと一人でいる時もいつの間にかユラユラしてるんだよなあ」
「ああ、レオ様がいつも立ったままユラユラしているのはそのせいだったんですね!」
「あと、エドワードが近くにいないのに、空耳で泣き声が聞こえたりする」
「エドワード様が泣き始めると、レオ様も陛下もみんな飛んで行ってあやしますものね。耳が泣き声を覚えているんですね」


 弟か妹ができるのが夢だったレオ様が、年の離れたエドワード様を目に入れても痛くない程可愛がっている姿は、周りから見ても微笑ましいです。
 私がルイーズに会いに行っている時も、人からは同じように見られていたのかもしれませんね。


「暴れ馬からコレットを助けた時も、コレットを抱っこしたな」
「ふふ……そうでしたね。あの時はレオ様も九歳の子供でしたのに、よく七歳の私を抱っこできましたね」


 私がエリオット様の気を引くために、わざと馬のおしりをつねって暴走させたのですよね。あの時一番に助けに来てくれたのはエリオット様でも周りの大人でもなく、たった九歳のレオ様でした。
 こうして昔話に花を咲かせることができるのも、十三年間レオ様と一緒に時間を積み重ねてきたからですね。