お茶会の時のことを気に病んでいたのか、ウェンディ・ミルズ侯爵令嬢が私を訪ねてきました。


「コレット様……! この前は本当に申し訳ありませんでした。私、ついつい兄の話をネリー様に話してしまって……それであそこまで広がってしまったんです。コレット様にはご不快な思いをさせてしまい、何とお詫びを申し上げたらよいか……」


 青ざめた顔をして、座りもせずに私に謝罪するウェンディ。ネリー様の手前、他にどうしようもなかったのでしょう。


「ウェンディ様、気になさらないでください。知らなかった私が悪いのです。もし私に悪いと思っていらっしゃるなら……そうだわ! 私最近、編み物に挑戦してみたいと思っているの。どなたか、編み物が得意な方をご存じないかしら?」
「そんな事でお許しいただけるのですか……?」
「許すも何も、あなたは何も悪くないわ」


 ウェンディ様は目に涙をためて、私に頭を下げます。しばらくして顔を上げた彼女は、笑顔で言いました。


「編み物でしたら、よく存じております。私の従兄に、編み物の貴公子(・・・・・・・)と呼ばれている者がおりますの」


 ……編み物の貴公子?
 おかしいわ、私その人どこかで聞いたことがある気がするの。編み物の貴公子……前世の記憶かしら?