「いい? 私が毎日あれだけ色々教えてあげているんだから、言う通りにするのよ。アンタがボヤボヤしているから、私みたいな人に付け込まれるんだからね!」

「はいはい、分かりました……」

 最近は、毎朝の身支度をしながらメイからのお説教を受けるのが恒例です。意外と仕事のできるメイはいつも鬼のようなスピードで仕事をこなし、空いた時間でこうして私に色々と情報をインプットしてきたり、私のベッドやソファでゆっくりくつろいだりしています。

 メリハリのある人生でうらやましいですね……。


「今日はお忍びでデートなんでしょう? いいじゃないの。チャンスだわ!」
「お忍びデートね……どうせレオ様は目立ってしまうから、お忍びにならないわ。メイも知っているでしょ」
「なーによ! 私がレオと街デートしたことあるからって、やきもちかしら? とにかくチャンスよ。レオがびっくりするくらい、どんどん迫っていかなくちゃ」


 メイに言わせると、私はとんでもない奥手らしいです。

 これではレオ様の方も押すに押せない。だからとにかく隙を作って、自分からレオ様に積極的に迫る。それがメイの作戦。久しぶりの二人の時間を楽しく過ごそうと思ったのに、こんなミッションまで課されて気が重いわ。
 メイに乱暴に髪の毛を梳かされながら、今日の私のやるべきことを頭の中で復習します。


「そもそも、アンタまだレオに好きだって伝えていないんでしょ? 論外ね。今日ちゃんと気持ちを伝えてこないと、部屋に鍵かけて閉め出すからね」


 どうしてこの人は、こんな我が物顔で私のお部屋に入り浸っているのかしらね。でも、メイからもこうやって後押しをもらったことだし、いよいよ今日こそは絶対にレオ様に告白します!

 膝下くらいまでのシンプルなワンピース。つばが広めな帽子にはグリーンのリボン。髪の毛はカールさせて、うなじは絶対に見せるべきだと主張するメイの言う通り、横に流してまとめます。

 待ち合わせ場所は、いつもの王都中央広場の噴水前。
 王都ではお決まりのスポット。

 『ムーンライトプリンセス』の王太子ルートの出会いイベントを起こすため、私とレオ様が早朝から集合した場所です。

 あの時はレオ様が、『ねみー』って言いながら登場しましたね。王太子オーラを隠せず、キラキラパウダーをふりまきながらガラ悪く現れたレオ様に、特注で作ったサングラスを手渡したのでした。