リゼットの花図鑑に挟まっていたスミレの調査結果が出たとカレンから連絡が入り、執務室で会うことにした。入ってきた彼女の表情を見るに、きっと良い結果ではなかったのだろう。リゼットにも同席をしてもらおうか迷ったが、連れてこなくて良かった。

 母親の図鑑に毒スミレが挟まっていたなんて言われたら、リゼットだって良い気分はしないはずだ。

 先日ロンベルクの街に出かけた時の、リゼットの悲しそうな顔が脳裏に焼き付いて離れない。
 せっかくリゼットが俺のことを好きだと言ってくれたのに、俺は手を放してしまった。
 リゼットの気持ちが俺への恋心であるとか、そんな勘違いはしてはダメだ。彼女は例え相手が俺じゃなくても、ああして誕生日祝いを計画してくれる優しい子だ。

 彼女の幸せを考えたら、俺は彼女に踏み込みすぎてはいけなかった。二人の時間が楽しくて、つい側に近寄りすぎてしまった。
 これではいざと言う時に離れ難くなってしまうのに。

 騎士としての仕事は休日なのか、カレンの服装は春らしい薄手のドレス。ロンベルクの春に、その服装は寒くないか? いつものキリっとした男勝りな雰囲気とは少し違った雰囲気でやって来た。

 仕事の一貫で頼んだのだから、騎士の制服で来てもらっても良かったのだが。