「旦那様……もしかしてとってもお疲れですか?」
「ん? 別に特にそんなことはないが……」

 翌朝のこと。
 ウォルターのはからいで夕食だけでなく朝食まで夫婦二人で頂くことになり、旦那様とテーブルに付いたのだが、旦那様の髪の色が目に入って驚いてしまった。

 美しい亜麻色だった髪の毛に、大量の白髪ができていたからだ。

 大量なんてものじゃない。髪の毛の三分の一くらいがまばらに白くなっている。極度のストレスで一晩で白髪になってしまう人がいるなんて聞いたことがあるけれど、もしかして旦那様も何か多大なストレスを感じているのだろうかと心配になった。

「旦那様! 見せてください!」

 席を立って旦那様の方に駆け寄る。背後から髪の毛を観察して、少し髪を持ち上げてみてもやっぱり白髪だらけだ。いや、白髪というよりも……

「……銀色?」

「リゼット……ちょっと近い……」

「はっ! 申し訳ありません!」

 しまった、驚きのあまり旦那様の頭に顔を近付け過ぎてしまった。パッと手を放して自分の椅子にすごすごと戻る。

「白髪かと思って見てみたのですが、銀髪ですね。お義父様かお義母様が銀髪でいらっしゃるのですか?」

「いや、そんなことはない。うちの家系に銀髪の者はいないと思うが……」

「ではやはりストレスでしょうか。本当に遠慮せず仰ってください、私は別にお食事をご一緒するのを無理強いするつもりはありませんし、もし王都に戻れと仰るのなら私はもちろん受け入れ……」

「いやいやいや! それは困る! 君にはここに居て欲しい……色んな意味で」

 「色んな意味で」、ですか。