「とにかく、洗いざらい全て教えていただけますか?」
「いいよ、何でも答えるよ。どこから説明する?」
「えっと、じゃあ、リカルド様はなぜロンベルクから失踪なさったんですか? お仕事が嫌だったんですか? それとも結婚するのが嫌だったんですか?」


 彼は私の質問を聞いて大声で笑い始めた。


「……いやいや! 僕が逃げる理由なんていくらでもあるでしょ! 僕は第二王子を守ったわけでもないんだよ、たまたま盾になっちゃっただけ。それなのに勝手に辺境伯に任命とか、ひどいよ陛下。あの戦いをまとめたのは全部ユーリだよ」


 リカルド様曰く、魔獣征伐を命じられたロンベルク騎士団は、第二王子を司令塔として森に入った。騎士学校の同期だったリカルド様、カレン様、そしてユーリ様も所属していた。戦いは一進一退を繰り返し、最後に数匹残った魔獣との戦いは熾烈を極め、ユーリ様の舞台が最も前線で戦っていた。
 
 第二王子の隊は前線から離れていたが、前線の戦いから逃れた魔獣が一匹追われてその隊の近くまで来てしまった。すっかり油断していた隊は応戦準備をする間もなく攻撃を受けてしまい、たまたま第二王子の近くにいたリカルド様がケガをした。

 リカルド様が襲われている最中に、仲間が背後から魔獣を斬って倒したらしい。

 ユーリ様やカレン様たち前線の隊は最後に残った魔獣を封印して戦いを終えたものの、結果として一匹取り逃がしたことで第二王子に危険が及んでしまった。最も命を張って戦ったユーリ様たちの評価は変わらず、たまたま隣にいただけの自分の評価だけが上がってしまい、辺境伯など任されることになってしまった。


「いやあ、どう考えても無理でしょ。ケガして怖くなっちゃったからもう戦いたくないし、せっかく命かけて頑張ったユーリが何も評価されないっておかしいと思わない?」

「え……ええ、それは確かに……。でも、話をそらさないでください! だからといって、任務を投げ出して失踪というのは良くないわ。ユーリ様だって、苦肉の策であなたの身代わりを」


 何だかこの人と喋っていると煙に巻かれそうになるけど、逃げる以外にも色々とできることはあったはずだ。それにこの人のせいで、ユーリ様も私も随分振り回されたのだ。