――庭園の長椅子(ベンチ)に、私たちは二人は並んで座った。

 私と彼の距離は、驚くほど近い。
 いつ二人の手が触れてしまうかという緊張感に耐えられず、私は両手を自分の膝の上に重ねた。

「マリネット……手を繋いでもいいだろうか」
「そんなことを真剣な顔で聞かないで下さい」

 恥ずかしさのあまり下を向いてドレスをつかんだ私の手の甲に、大きなゴツゴツとした手がそっと添えられる。彼の指はそのまま私の指の間に滑り込み、優しく握った。
 心臓が早鐘を打ち、思わず息をすることすら忘れた私は、全身に力が入ったまま彼から目を逸らす。

「ちょっと待って……死んでしまいそうなほど恥ずかしいです。これ、何の罰ゲームですか?」
「……罰ゲームとは失礼だ。これはジーク国王陛下のご命令だぞ」
「こんなの、どう考えたって罰ゲームですよ! いくら国王陛下のご命令とは言え、どうして好きでもなんでもない相手とムードたっぷりに手を繋がないといけないんですか?」

 私は半分泣きそうな顔で彼の方に振り返った。

「仕方ないだろう。陛下からあんな風に命令されてしまっては、断ることは俺にはできんっ……」
「それは確かにそうですね。陛下のお願いを叶えるためならば、私もラルフ様と手を繋ぐことくらい我慢しなければ……」

 私たち二人は手を繋いだまま、空を茜色に染める夕日をいつまでも見つめていた――。